皆様こんにちは、瀧養蜂場 瀧悠一です。
今日はちょっとだけ難しいお話をしたいと思います。
タイトル通り、はちみつに対する誤解のお話、です。
この商売を始めてもうすぐ1年となります。が、いまだに蜂蜜に対する誤解を解くのが本当に難しいな、と思っています。
たとえば、瀧養蜂場では現在、百花蜜のみ取扱を行っています。レンゲやアカシアのはちみつは、土地の確保や樹木確保などの問題で、なかなかうまくいきません(今年の春は、ウメとサクラ、うまくいけばナタネつまり菜の花の蜜が集められそうですが)。ところが、百花蜜は蜂蜜と認めてくれない方が本当に多いのです。好みの問題も大いにあると思うのですが、レンゲやアカシアの蜜でなければ蜂蜜じゃない、と言われてショックを受けたこともあります。
逆に、「はちみつ」の蜜の種類(先程書きましたように、アカシアやレンゲ、ナタネなど)を伝えると、それは駄目だ蜂蜜が欲しいんだ、と仰る方もいます。なぜでしょう。
はちみつは、ミツバチが花から採ってきた花蜜を巣に溜め込み、それを自身の熱と風で濃縮させたものです(かなり掻い摘んだ説明。ちなみに「ただ集めてきた花蜜」は蜂蜜とは言わない)。ですのでこのケースでは……多分ですが、百花蜜と蜂蜜を「違うもの」と考えていらっしゃるのだと思われます。残念ながら、こういった誤解を解くのは容易ではありません。
変な例えをするなら、「包丁が欲しい」と言われ買っていっても「これは包丁ではない」と言われるのと似ていると思います。依頼者は「包丁はステンレスで出来ているもの」と思い込んでいて、しかし私が「鋼で出来ている包丁」を持って行ってしまった、という感じでしょうか。どちらも同じ包丁ですが、依頼者と私との間には「包丁」という共通したテーマがあり、どちらも似たように使えるにも関わらず、「素材」という部分が食い違ってしまっている。私が必死に説明しても、依頼者の常識では「包丁」は「ステンレスの薄い刃の包丁」ということになってしまっているため、それを変えることは難しい。
……たぶん、こういう認識の違いではないかな、と思っています。
これと似た話として、「お店で売っている蜂蜜には水飴が混入されている」という先入観も同じで、これも本当によく訊ねられる質問です。水飴の主成分は麦芽糖となっていますが、はちみつの主成分はブドウ糖と果糖です。糖分という点では共通ですが、その構造は全く違うものです。現在では、はちみつに別の糖分を混入させた場合は「加糖はちみつ」と表記することになっています(ただし、重量中はちみつが60%以上でなければいけない)。精製はちみつは色や香りを飛ばしたはちみつで、お菓子作りなどで用いられます。
こういった話が出る背景には、過去はちみつが高級品であった時代に、粗悪な(混ぜ物をしたり、水分の多いはちみつを加熱して水分を飛ばした)はちみつが多く出回っていた頃の名残なのだと思います。とはいえ、現在でも「国産はちみつのように見せていたはちみつに外国産を混ぜていた」とか「はちみつに糖分を混ぜていた」というニュースが時折見られます。養蜂家としては頭の痛くなる話で、こういうニュースを見る度に、国内の養蜂家の信頼が崩れていってしまうのかなぁ、などと思っています。
とにかく、「誤解を解く」というのは本当に難しい話なのです。
皆様には是非、正しい知識を持って蜂蜜を選んで頂き、召し上がって頂ければ、と思っております。